|
天親(世親)は、4〜5世紀に活躍したインドの僧侶で、インド名はヴァスバンドゥといいます。彼は兄である無着(インド名・アサンガ)と共に、大乗仏教の学派の一つ、「唯識」の大成者として知られています。
彼は、初めは部派仏教(小乗仏教)の僧侶でした。特に説一切有部と呼ばれる学説に精通していたとされます。
その頃兄・無着は既に大乗仏教を信奉していました。この兄を部派仏教に連れ戻そうと天親は考えていたそうですが、逆に無着に説得され、大乗仏教側に移ることになりました。そして、無着と共に「唯識」についての大量の文献を残すことになりました。
部派仏教の教えをまとめた書物が仏教の百科辞典とも言われる『倶舎論』であり、唯識の書物としては『唯識三十頌』、『唯識二十論』や、無着が著した『摂大乗論』や『大乗荘厳経論頌』についての注釈書、などが彼の書物として有名です。
彼は同時に浄土信仰にも通じていたとされます。彼は大乗に転向した後、浄土三部経の1つ、『無量寿経』に出会います。
彼は『無量寿経』によった『浄土論』(別名『往生論』)というテクストを残します。阿弥陀如来への帰依を説いたこの論書は、この後の浄土教に大きな影響を与えます。日本においては、浄土宗の開祖・法然は『浄土論』を浄土三部経と合わせて「三経一論」と呼びますし、浄土真宗では天親を「天親菩薩」と呼んで重要な7人の先師・七高僧の第2番目として尊びます。
このように幅広い知識を併せ持った天親は、仏教史上有数の天才の一人といって差し支えがないと思われます。
|