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『往生要集』は、源信(恵心僧都)によって書かれました。多くの経典や論書などから極楽往生に関する文章が集められ、阿弥陀仏の極楽浄土に生まれるためには何が大切なのかが説かれている書物です。
この世の苦しみを離れ阿弥陀仏の極楽世界に生まれることを願うべきであり、この末法の世においては念仏こそがそのためのすぐれた方法であると説かれます。この書物は貴族から庶民にまで広く普及し、法然や親鸞といった後の浄土思想家だけでなく、文化や芸術などにも大きな影響を与えました。
『往生要集』といえば、地獄の描写が特に有名です。地獄とは奈落ともいわれ、悪いことをしたものが落ちて様々な責め苦を受ける世界とされています。地獄には次の八種類があるといいます。等活・黒縄・衆合・叫喚・大叫喚・焦熱・大焦熱・無間です。この順番に苦しみの度合いも増していきます。最も苦しいとされる無間地獄、別名阿鼻地獄では、極限の苦しみを文字通り間断なく味わうといいます。
ところで地獄の恐ろしい描写ばかりが強調されますが、地獄は離れるべき輪廻の世界の一つでしかありません。地獄以外にも、常に飢えに苦しむ餓鬼道、下等な存在として苦しむ畜生道、争いの絶えない修羅道、不浄・苦・無常である人道があり、快楽に満ちた天道でさえ苦しみからは逃れられません。この輪廻の世界を六道といいます。源信の最も言いたかったのは地獄の恐ろしさではなく、そのような苦しみの世界から離れて(厭離穢土)、極楽浄土に生れるために念仏をするべきだ(欣求浄土)ということなのです。
『往生要集』では主に次の5つの念仏(五念門)が説かれました。阿弥陀仏を礼拝する「礼拝門」、讃嘆する「讃嘆門」、悟りを求める心を起こす「作願門」、阿弥陀仏の姿をイメージする「観察門」、念仏の功徳を他に振り向ける「回向門」です。このように源信の念仏は、後に盛んになる口で称える念仏とは少し異なったものでした。
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