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『大日経』は正式には『大毘盧遮那成仏神変加持経』といい、『金剛頂経』と共に真言宗で最も大事な経典(所依の経典)です。これは、空海が久米寺で見て、中国留学を決意したという話が物語るように、空海の思想に及ぼした影響の大きさだけではなく、真言宗で特に重んじられる2つの曼荼羅のうちの胎蔵曼荼羅が説かれていることにもよります。また、『金剛頂経』とあわせて「両部の大経」ともいわれます。
『大日経』は紀元7世紀の中頃に中インド(もしくは東インド)で成立したと考えられています。インド僧善無畏とその弟子・一行により724年に漢訳されました。現在、サンスクリット原典は見つかっておらず部分的にしか残っていませんが、上記漢訳以外に、チベット語訳があります。
漢訳では7巻36品(章)で構成されています。このうち、最後の5品は付属編であり、残りの31品も第1「住心品」と残りの第2「具縁品」以下で大きく異なります。「住心品」は理論面を説くのに対して、「具縁品」以下は仏教儀礼の実践面を説いています。
「住心品」では、仏の智慧、悟りとは何かという事が示されています。そして品題が示すとおり、「心」が主題となっています。それによると、悟りとは、求めて努力する決意(菩提心)を出発点とし、すべての者を救おうとする慈悲の心(大悲)を基盤とするといいます。さらに悟りの究極の目的は、自己を顧みず他者に尽くすこと(方便)にあると説かれています。また、人々の心のあり様がそのまま悟りに他ならない(如実知自心)とも教え、160にも及ぶ心の状態を、段階を追って分析・説明しているのです。
「具縁品」以下は、曼荼羅の作り方や護摩法要のやり方、あるいは密教における師匠と弟子に求められる資格についてなどが説かれています。
空海はこの経を重視したのは前述しましたが、彼の主要著作に数多く引用されています。特にここに説かれている様々な心の状態を用いて、空海の代表思想ともいえる「十住心思想」と呼ばれる思想体系(『十住心論』などに説かれる)を構築したのでした。
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