帝釈天はインド古来のバラモン教の神・インドラが、護法の神として仏教に取り入れられたもの。梵天とともに、修行時代からお釈迦様をサポートし続けています。普段は須弥山の山頂にある善見城に住み、四天王を統率して、仏教をおびやかす悪魔に目を光らせています
インドラは、インド・アーリア語族の最古の神と言われます。インドだけでなく、メソポタミアの地でも信仰されていたようで、紀元前14世紀頃の遺跡から発掘された文章に登場しています。ただし、仏教と同時代にイランで生まれたゾロアスター教では、どういうわけか、インドラは悪魔とされました。
バラモン教の聖典『リグ・ヴェーダ』は、神々への賛歌を収めたもので、その賛歌の数は1028。そのなかの約4分の1がインドラに対して唱える賛歌です。とても人気がある神様でした。
インドラは、多くの場合、勇猛な戦いの神として登場します。龍の姿をした悪魔ヴリトラが水と光を独占していました。このヴリトラと闘い、水と光を解放したのがインドラです。水と光、太古の人間にとって(もちろん現代の私たちにとっても)生きていく上で必要不可欠なものを悪魔の独占から解放した英雄というわけです。
この闘いの前、インドラが怖気づいて動けなくなってしまうシーンがあります。その際、インドラの臣下の神々がインドラのマルマンという急所に触れて、その激痛によりインドラは我にかえり、ヴリトラの闘いに挑んだという次第です。このマルマン、中国では末摩と訳されました。日本でも、とても激しい痛みや苦しみを「断末摩の苦しみ」「断末摩の叫び」などと言いますが、インドラもたじろぐ急所を切られてしまうわけですから、大変なわけです。
ヴリトラとの闘いのほかにも、悪魔と闘う場面があります。悪魔たちが不死の飲み物アムリタ(甘露)を持っていて、このアムリタがあるため、悪魔は死んでも生き返ることができ、神々は苦戦していました。アムリタはシュシュナという悪魔が持っていて、保管場所はその口の中。これを知ったインドラは、蜜に姿を変えて、シュシュナの前に。シュシュナが蜜を口に運ぼうとした瞬間に、インドラはシュシュナの口からアムリタを奪い、鷲に変身して、飛んでいきます。アムリタを手に入れた神々は悪魔との闘いを有利に進めることができたというわけです。
こうして悪魔と闘う英雄インドラは、仏教に取り入れられ、中国に伝わります。神様の力を表わすのにシャクラというサンスクリット語がありました。強力な、能力がある、という意味です。中国に伝わる時、このシャクラに釈という漢字を当てました。それから、インドラは全ての神様の中で最も強力、つまり帝王というわけで、「帝」。さらに、神様を表わす「天」。この三文字をあわせて帝釈天となりました。他にも釈迦羅、釈提桓因などとも呼ばれます。
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