『正法眼蔵随聞記』(しょうぼうげんぞうずいもんき)は、全六巻であり、懐奘の編集とされ、『随聞記』とも略称されます。本書は、懐奘が道元の教えを聞き書きした記録です。この記録は、懐奘が道元の弟子となった文暦元年(1234)直後の嘉禎年間(1235〜1238)に、懐奘が自らのために書きとどめたものです。懐奘の存命中には公開されず、懐奘が亡くなった後、鎌倉時代の末期に編集されたと考えられます。
本書は、懐奘の日記のようなものであり、道元の教えを平易な文体で記述されています。その書き出しは「示して云く」とか「夜話に云く」となっており、道元が折にふれて弟子たちに示した教えを断片的に記録しています。
それゆえ、体系的に書かれているのではなく、仏道の修行を志す人たちに対して、学道の用心に関する教えを教訓的に示している書といえます。その内容について紹介すれば、吾我名利、坐禅、道心などに関する記述があげられます。
学道を志す人は、出家して財産を捨て、名利を求める心を捨てるべきであると示されています。自らの我見で修行することを戒め、仏法に随い、正師の教えに随うべきであると主張しています。
道元が仏道として最も強調しているのは坐禅ですが、本書にも坐禅の重要性が指摘されています。祖師方の得道は坐禅に基づくのであり、只管打坐の実践こそが重要であると主張されています。
学道の志を発すためには強い道心を起こす必要があると述べています。道心がなければ、形式的な修行に陥り、決して得道することはできないと主張しています。また、どんなに聡明であり理智であっても、道心がなければ得道することはできないともいっています。
本書は、春秋社発行の『道元禅師全集』第七巻、岩波文庫、講談社学術文庫などに収められています。
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